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「展示特集 新たな修理された文化財」12月17日~1月13日 プレスレビューより

 

長いときを経て今に伝わる文化財。その多くが過去の人の手による修理を受けながら大切に受け継がれてきました。奈良国立博物館にも多数の文化財が保管されています。これらを未来へと継承していくために、絵画・彫刻・工芸・考古の各分野の収蔵品(館蔵品、寄託品)について、毎年計画的に修理を実施しています。また、館内に設置されている文化財保存修理所では、専門の修理技術者によって国宝、重要文化財級の貴重な品々に対する修理が日々行われていて、同館の収蔵品も修理されることが少なくありません。

 本特集展示では、前年までに修理された文化財の中から選りすぐって展示し、あわせてその修理内容をパネル等を利用しながら広く紹介しています。

 この展示を通じて改めて新たに復活した文化財の魅力を堪能するとともに、文化財修理の取り組みについての関心と理解を深めていただけたらと思います。

 

 

不動明王および二童子立像

不動明王:木造 彩色 截金

矜羯羅童子・制吒迦童子:木造 古色

不動明王 平安時代(12世紀) 矜羯羅童子・制吒迦童子 江戸時代 奈良国立博物館

館蔵品修理(令和五年度) 施工 公益財団法人  美術院

奈良の吉野山に伝来した三尊像。不動明王の気品ある忿怒相や抑揚のある肢体、着衣の優美な彩色・截金文様には平安時代後期の特色が認められる。それぞれに彩色層の剥落止めを行い、不動明王は左肩部と台座の虫穴を樹脂で埋め、持ち物の羂索には樹脂を塗布して材質を強化している。

彫刻の修理に用いる道具や材料

彫刻作品は木材を中心に、漆や顔料など様々な材料から構成されています。そのため修理には木材を加工する鑿(のみ)や鉋(かんな)、小刀といった刃物類に加え、砥石や箆(へら)、刷毛、手板など多様な道具が使用されます。これら修理に用いる道具の多くは技術者の手によってつくられています。

 

十二天像の一部 (右から)梵天、日天、伊舎那天、帝釈天
十二天像の一部 (右から)梵天、日天、伊舎那天、帝釈天

 

【重要文化財】十二天像

絹本著色 鎌倉時代(13世紀) 奈良国立博物館

館蔵品修理(令和二年~五年度) 施工 株式会社  文化財保存

十二天は各方向をつかさどる守護神で、主に密教儀礼の空間に配置された。本図は立像の十二天のセットで、当初は六面ずつで一対の屏風であったと考えられる。三重・大法院旧蔵の品。画面となっている絹(画絹)の折れや剥離が著しく、表具の解体を伴う本格的な修理が行われた。

 

 

 

 

 

【重要文化財】五大明王像

絹本著色 鎌倉時代(13世紀) 奈良国立博物館

館蔵品修理(令和四年度~五年度) 施工 株式会社  文化財保存

矜羯羅・制吒迦の二童子を従える不動明王を中心として、その右下から時計回りに降三世、軍荼利、大威徳、金剛夜叉の五尊の明王が配置される。五大明王を一図に描く希少な例である。絵具層の粉状化、剥離、剥落が著しく進行していたため、本格修理が行われた。

 

絵画の修理に用いる道具や材料

絵画は、絵の描かれている本紙と、それを支える複数の裏打紙などで構成されています。これらの修理には、小麦澱粉糊などの伝統的な材料や技術を中心に、人為的に弱くさせた電子線劣化絹などの新しい技術や材料も用いられています。

 

 

縄文土器(赤彩広口蓋形土器・人面付蓋形土器〔伝青森県寺下遺跡出土〕

土製 縄文時代晩期(紀元前十~前四世紀頃) 奈良国立博物館

館蔵品修理(令和五年度) 施工 元興寺文化財研究所

縄文時代晩期の東北地方を中心に広がる亀ヶ岡式土器に属する。線刻した雲形文によって縄文部と無文部が区画された手の込んだデザインである。修理前は破片を粗く接合した状態であったが、解体・強化・再接合・欠失部の充填・補彩により、当初に近い姿によみがえった。

 

【開催概要】

 

展覧会名:特集展示 新たに修理された文化財

会  期:2024年12月17日(火)~2025年1月13日(月・祝)

会  場:奈良国立博物館 西新館

開館時間:午前9時30分~午後5時

     ※12月17日(火)は午後7時まで。

     ※入館は閉館の30分前まで。

休  館  日:毎週月曜日、12月28日(土)~1月1日(水)

     ※ただし1月13日(月・祝)は開館。

観覧料金:一般  700円

     大学生 350円

     ※高校生以下および18歳未満の方、満70歳以上の方、障害者手帳またはミライロIDをお持ちの方(介護者1名を含む)

      は観覧無料。

     ※この観覧料金で、特別陳列「東大寺伝来の伎楽面ー春日人万呂と基永師ー」(なら仏像館 ~12月22日(日))、

      特別陳列「春日若宮おん祭の信仰と美術」(東新館)・名品展「珠玉の仏教美術」(西新館)・「珠玉の仏たち」

      (なら仏像館)・「中国古代青銅器」(青銅器館)をあわせてご覧いただけます。

出陳件数:11件

主  催:奈良国立博物館

特別支援:DMG森精機