華道家元池坊は、江戸時代前期から続く日本最古の花展「令和6年度 旧七夕会池坊全国華道展」の特別展示として、華道史上初となる、江戸時代初期から中期の「薄端立花瓶」59点を一斉公開しました。「友馨 立花の世界」と題するこの展示は11月15日(金)~18日(月)の期間、いけばな資料館で開催中。
本展では、薄端立花瓶59点(頂法寺六角堂の奉納の5点を含む)を展示し、うち4点には立花の実作がいけられています。
江戸時代の花瓶は銘がないものが多いのですが、銘のあるものもあり、その中でも”天下一”と冠するものは、鋳物師や陶工などの名人の称号で、織田信長や豊臣秀吉が許したことに始まりますが、のちに乱用されるようになったため、天和2年(1682)使用禁止となります。製作年代を推定する手がかりとして江戸初期以前のものではないかと考えられます。作者のわかっている立花瓶の歴史的背景が伺えます。
これらの立花瓶は、池坊中央研修学院 特命教授 三浦友馨先生が収集された貴重な薄端立花瓶です。
頂法寺 六角堂へ奉納の5点
・月耳遊鎧薄端立花瓶
・菖葉紋獅子耳薄端立花瓶 六条若宮住 天下一 陸奥大掾作
・四方象耳薄端立花瓶 越後
・雲耳遊鎧薄端立花瓶
・月耳遊鎧薄端立花瓶
※陸奥大掾 名は家次。多くの鋳物師が拠点を構えた三条釜座(現・京都市中京区)からやや離れた六条若宮(現・京都市下京区)に住み、仏具屋を営んでいました。
●立花瓶(りっかへい)とは
立花専用の器。室町時代の立て花よりも丈が高く枝数も多い立花が広まると、高さ30㎝前後の器が国内で生産されるようになりました。ほとんどが青銅製です。
●薄端(うすばた・うすはた)とは
花瓶の口の部分が広く薄く、皿のような形をしているもの。水面を広く見せることができ、たてられた(いけられた)花に安定感を与える。
●耳とは
花瓶の左右に付けられた飾り(稀に四方に付けられたものもあります)。動物や植物など、さまざまなデザインが工夫され、花瓶の個性を出すのに一役買っています。
●遊鎧(環)とは
鎧(環)すなわちリング状の部品が固定されていないこと。古代中国の銅器ですでに見られます。過分の装飾として多く用いられました。
※越後守 江戸時代前期の立花瓶の銘にその名が多くみられる鋳物師。寛文13年(1673)に刊行された池坊の作品集『立花図井砂物』に登場する仏具屋越後と同一人物か。
今年から3年にわたり、江戸初期から中期と思われる花瓶の展示と、伝花・伝承されてきた立花のが催されます。絵図に残されている花瓶とおぼしきものに資料が添付されていて参考になります。江戸時代中期までにさまざまな花瓶が生み出され、立花の発展に大きな影響を与えてきたことを、実際に見て知ってみるのもロマンがあります。
今回と今後の予定
第1章 2024年 ー 薄端立花瓶に立つ ー
薄端立花瓶50点と4点の作品の展示
頂法寺奉納薄端立花瓶5瓶の展示
第2章 2025年 ー 砂鉢に立つ ー
砂鉢50点と4点の作品の展示
第3章 2026年 ー 中蕪立花瓶・下蕪立花瓶に立つ ー
中蕪立花瓶と下蕪立花瓶合わせて50点の展示と4点の作品の展示
公式サイト https://www.ikenobo.jp/event/52931/