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かつてない濃密な空海の展覧会が奈良で開幕!「空海 KŪKAI ―密教のルーツとマンダラ世界」奈良国立博物館

 

 かつてない濃密な内容の空海の展覧会「空海 KŪKAI ―密教のルーツとマンダラ世界」が奈良国立博物館で開催されています。それに先立ち4月12日(金)に催された記者内覧会より紹介します。

 平安時代初頭、仏教界で最澄と共に広く活躍した聖僧・空海(774~835)がたどり着いき、生涯を通して老若男女貴賤を問わず人々を救おうとしたのが真言密教です。

 インドで仏教後期に誕生した密教は、海からの南のルートと、陸のシルクロードを通って中国に伝わりました。それまで断片のみで密教は日本に伝わっていましたが、本格的な体系立った密教の習得を志し、人生をかけて中国の長安の都へと渡ります。そこで密教の高僧・恵果(けいか)と運命的な出会いを果たし、密教のすべてを伝授されます。帰国後は、密教を中心に、四国満濃池の修築といった土木や天文学、医学、三筆の一人に数えられる書、また民間で初めての大学の創設「綜芸種智院」など、62歳で高野山で入定(にゅうじょう)されるまで多方面で精力的に活躍されました。そして高野山で入定された空海は、「高野の山の岩かげに、大師はいまもおわしますなる」という空海の入定信仰(生きたままの姿でいまなおいて衆生を救われている)が人々の中の生き続けているのです。

 密教は、言葉だけですべてを理解できない秘密の教えとされています。秘密というのは、隠してるから秘密でなく、間違えた解釈などの可能性もあるので、正しい見方によって知るものです。仏から教えの電波は24時間送られてるけど、聞こうとしないラジオは、周波数を合わさないと声が聞こえないのと同じです。周波数が一致して初めて知ることができるのです。秘密のそれは心の持ち方だけで決してむつかしいことではありません。体で見て、口で唱え、心で感じる(三密加持)。本展において、そのような見方で感じることも可能な展示構成になっていると思いました。

 本展は、空海の生誕一二五〇年を記念するものです。空海が伝えた密教とはどのようなものであったか、目で見て、五感で感じて、空海がもたらした密教の世界観を、平面・立体の曼荼羅やその他絵画、仏像、法具、そして目を引いたのが空海の書、特にインドナシア・中国に残された密教美術からも感じ取っていただければと願うものです。

 今回、空海が直接制作に関わった最古の両界曼荼羅である「高雄曼荼羅」が、今回、修理後初の一般公開となります。また、インドから陸海で中国に伝わった作品などから、空海以前の、空海が留学前に夢見たであろう密教の歴史もたどり、密教の世界観をぜひとも体感していただく、これまでにない視点に立った展覧会です。

 

虚空尽き、衆生尽き、涅槃尽きなば、我が願いも尽きなん「高野山万燈会の願文 一首」(『続遍照発揮性霊集補闕鈔 第八』)  〔この世のすべての存在がなくなり、人々もなくなり、仏法の世界も尽きるまで、私は人々が悟り救われるまで願いを捨てることもない〕

 

  (記事:佐伯浩道) 

 


第1章 密教とは ── 空海の描いた世界

 

空海は「密教は奥深く文筆で表し尽くすことが難しい。そこで図や絵を使って悟らない者に開き示すのだ」と述べました。

本章では、密教世界の中心である大日如来とそれを取り囲む仏たち、胎蔵界・金剛界という2つのマンダラの世界を、立体的な空間で展示します。

 

国宝 五智如来坐像 平安時代(9世紀) 京都・安祥寺 (撮影:佐伯浩道)
国宝 五智如来坐像 平安時代(9世紀) 京都・安祥寺 (撮影:佐伯浩道)

国宝 五智如来坐像 平安時代(9世紀) 京都・安祥寺

智拳印を結ぶ金剛界の大日如来を中尊とし、阿閦(東)・宝生(南)・阿弥陀(西)・不空成就(北)の四仏を加えて一具をなす五智如来(金剛界五仏)です。「五智」とは大日如来がそなえる五つの知恵のことで、五仏によってそれらを象徴的にあらわしています。奈良時代以来の伝統を引き継ぐ技法で、頭体幹部をヒノキとみられる針葉樹材より彫出する一本造で、内刳りを施し、、表面には乾漆を置いて漆箔仕上げとしています。

 

                  【重要文化財 両部大壇具】二具 鎌倉時代(14世紀) 奈良・室生寺
                  【重要文化財 両部大壇具】二具 鎌倉時代(14世紀) 奈良・室生寺
【重要文化財 両界曼荼羅(胎蔵界曼荼羅)[血曼荼羅]】 平安時代・久安6年(1150) 和歌山・金剛峯寺                  【重要文化財 両部大壇具】二具 鎌倉時代(14世紀) 奈良・室生寺
【重要文化財 両界曼荼羅(胎蔵界曼荼羅)[血曼荼羅]】 平安時代・久安6年(1150) 和歌山・金剛峯寺                  【重要文化財 両部大壇具】二具 鎌倉時代(14世紀) 奈良・室生寺

重要文化財 両界曼荼羅[血曼荼羅] 平安時代・久安6年(1150) 和歌山・金剛峯寺                  

久安5年(1249)5月に高野山大塔は炎上しました。早速に大塔再建の宣旨が下り、平忠盛が再建奉行に命じられ、その子平清盛が父に代わって業務に当たり保元元年(1156)に落慶しました。この両界曼荼羅は常明法印が描き、清盛が自分の頭の血を絵具に混ぜて胎蔵界中台八葉院の大日如来の宝冠を描かせたと伝えるので " 血曼荼羅 " と呼ばれています。ふるさと重要性からも我が国有数の曼荼羅です。

重要文化財 両部大壇具】二具 鎌倉時代(14世紀) 奈良・室生寺

室生寺の灌頂堂(現在の本堂)に安置されていた二基の大壇です。本品は、金剛界・胎蔵界の両部曼荼羅の前に設けられた両部大壇で、壇上の密教法具も含めて制作当初のものをほぼ完備している貴重なものです。灌頂堂が建立された鎌倉時代の延慶元年(1308)頃の作と考えられています。

 

重要文化財 弘法大師坐像 木造 彩色 鎌倉時代(13~14世紀) 奈良・元興寺
重要文化財 弘法大師坐像 木造 彩色 鎌倉時代(13~14世紀) 奈良・元興寺

重要文化財 弘法大師坐像 木造 彩色 鎌倉時代(13~14世紀) 奈良・元興寺

弘法大師空海の肖像。左手は数珠をとり、右手は胸の前で五鈷杵をとる姿は空海像の典型ですが、丸みを帯びた若々しい顔立ちにこの像独自の魅力があります。中世奈良における弘法大師信仰を象徴する存在です。

 


第2章 密教の源流 ── 陸と海のシルクロード

 

密教は仏教発祥の地・インドにおいて誕生しました。

その根本経典とされるのが『大日経』と『金剛頂経』です

『大日経』は、陸路を通って唐に入ったインド僧、善無畏により漢訳され、『金剛頂経』は、海路を経て唐に入ったインド出身の金剛智によってもたらされました。


金剛界曼荼羅彫像群(ガンジュク出土)のうち大日如来
金剛界曼荼羅彫像群(ガンジュク出土)のうち大日如来

金剛界曼荼羅彫像群(ガンジュク出土) 10世紀 インドネシア国立中央博物館

多数の尊像を並べ、金剛界の立体マンダラを構成する群像の中心となる大日如来像。インドネシアに密教が伝わっていたことを示す重要な事例。今回の展覧会に向け、奈良国立博物館の協力によって国際共同プロジェクトで射売りされてから日本初公開となります。

国宝 梵夾(ぼんきょう)[大日経真言・十二天真言] 紙本墨書 中国・唐(9世紀) 滋賀・園城寺
国宝 梵夾(ぼんきょう)[大日経真言・十二天真言] 紙本墨書 中国・唐(9世紀) 滋賀・園城寺

国宝 梵夾(ぼんきょう)[大日経真言・十二天真言] 紙本墨書 中国・唐(9世紀) 滋賀・園城寺

古代インドでは、ヤシ科植物などの葉を加工した貝多羅葉(ばいたらよう)に経典を書写しました。本品はその形をまねた紙にサンスクリット語の大日経に登場するほとけなどの真言を書き、その漢字表記を書き添えたものです。

円珍(814~891)の請来品。

 

国宝 大毘盧遮那成仏神変加持経(大日経) 紙本墨書 奈良時代 天平神護二年(766) 奈良・西大寺

「大日経」と呼ばれる密教の根本経典一つ。密教の教主、大日如来が心の在り方ととその実践を説いたものです。716年にインドから唐に来た善無畏が、弟子の中国人僧、一行に筆記させる形で漢訳しました。

 

 


梵夾(ぼんきょう)[大日経真言・十二天真言] 紙本墨書 中国・唐(9世紀) 滋賀・園城寺
梵夾(ぼんきょう)[大日経真言・十二天真言] 紙本墨書 中国・唐(9世紀) 滋賀・園城寺

 

一級文物 文殊菩薩坐像 大理石製 中国・唐(八世紀) 中国・西安碑林博物館

長安にあった安国寺の跡で発見されました。文殊菩薩とされますが、服装や持物は胎蔵旧図様〈19〉に描かれる密教尊、金剛波羅蜜菩薩に近い。遺跡からはこの像とともに複数の密教像が見つかっており、長安での密教の興隆を物語っています。


 

第3章 空海入唐と恵果との出会い ──  胎蔵界と金剛界の融合

 

讃岐国に生まれた空海は、山林などでの修行を経た後、遣唐使の一員として学ぶ機会を得て唐に渡りました。

そして、長安で密教の師、恵果阿闍梨と運命的な出会いを果たします。

 

重要文化財 弘法大師行状絵詞 巻第三(部分) 南北朝時代(14世紀) 京都・教王護国寺(東寺) ※展示替えあり

重要文化財 弘法大師行状図画 巻第二 紙本著色 鎌倉時代(14世紀) 和歌山・地蔵院

荒れ狂う海を越え、遣唐使船に乗って唐に向かう空海

空海の生涯を描く全六巻の絵巻。空海の絵巻は数多く伝わりますが、鎌倉時代に遡る本品は大変貴重です。巻第二は入唐の様子が描かれています。天地の余白は別の絵巻を写した作例の特徴で、空海の物語が繰り返し写し伝えられたことがわかります。

 

国宝 金銅密教法具 銅製 鋳造 鍍金 中国・唐(9世紀) 京都・教王護国寺(東寺)
国宝 金銅密教法具 銅製 鋳造 鍍金 中国・唐(9世紀) 京都・教王護国寺(東寺)

国宝 金銅密教法具 銅製 鋳造 鍍金 中国・唐(9世紀) 京都・教王護国寺(東寺)

真言宗最大の法会、後七日御修法に用いる法具です。悪を砕き仏を喜ばせるという五鈷杵と五鈷鈴が金剛盤に乗るかたちをとっています。

空海が唐から請来した品であり、『弘法大師請来目録』にその存在が記される真言密教の至宝です。

 

国宝 錫杖頭 銅製 鋳造 鍍金 中国・唐(9世紀) 香川・善通寺
国宝 錫杖頭 銅製 鋳造 鍍金 中国・唐(9世紀) 香川・善通寺

国宝 錫杖頭 銅製 鋳造 鍍金 中国・唐(9世紀) 香川・善通寺

空海の請来品と伝える錫杖の頭部。錫杖は本来山野を歩く際に持つ杖ですが、法会で振り鳴らす梵音具としても用いられました。本品は両面に阿弥陀三尊と二天を鋳表した装飾性の高い名品です。尊像表現は極めて精緻で、同時期の金銅仏を思わせます。

 


国宝 弘法大師請来目録 紙本墨書 平安時代(9世紀) 京都・教王護国寺(東寺)
国宝 弘法大師請来目録 紙本墨書 平安時代(9世紀) 京都・教王護国寺(東寺)

国宝 弘法大師請来目録 紙本墨書 平安時代(9世紀) 京都・教王護国寺(東寺)

空海が入唐の成果を朝廷に報告するため作成した請来品の目録。経典、絵画、法具、恵果から譲られた品、長安での修行内容を報告するほか、密教の優れた特性や、密教を日本に広めたいという空海の意気込みも語られています。

国宝 諸尊仏龕 木造 素地 中国・唐(7~8世紀) 和歌山・金剛峯寺
国宝 諸尊仏龕 木造 素地 中国・唐(7~8世紀) 和歌山・金剛峯寺

国宝 諸尊仏龕 木造 素地 中国・唐(7~8世紀) 和歌山・金剛峯寺

空海が身辺に置いたと伝えられることから枕本尊と称される三面開きの仏龕です。折りたたむとストゥーパ(仏塔)形となります。インド風な面貌で唐代の作と見られますが、古い時代のものを模した可能性があります。空海が師の恵果から受け継いだ品といいます。

 


第4章 空海の帰国 ── 神護寺と東寺  密教流布と護国

 

帰国した空海は、神護寺を拠点に密教の流布を行い、多くの僧侶たちが密教を学ぶようになりました。

また朝廷の信頼を得た空海は、平安京の東寺を任され、密教による護国の役割も期待されていきました。

 

国宝 風信帖 紙本墨書 平安時代(9世紀) 京都・教王護国寺(東寺)
国宝 風信帖 紙本墨書 平安時代(9世紀) 京都・教王護国寺(東寺)

国宝 風信帖 紙本墨書 平安時代(9世紀) 京都・教王護国寺(東寺)

空海が最澄に宛てた手紙三通を一巻としたものです。一通目では書物の送付に感謝し、会って話をしたいと伝えています。平安時代初めの仏教界に新たな風を起こした二人の交流と、力強くも清々しい空海の筆跡を伝えます。

 

国宝 灌頂暦名 紙本墨書 平安時代 弘仁三~四年(812~813) 京都・神護寺
国宝 灌頂暦名 紙本墨書 平安時代 弘仁三~四年(812~813) 京都・神護寺

国宝 灌頂暦名 紙本墨書 平安時代 弘仁三~四年(812~813) 京都・神護寺

高雄山寺(神護寺)において弘仁三年(812)から翌年にかけ行われた、金剛界・胎蔵界の結縁灌頂を受けた人々の名簿で、空海がその手で書いています。この灌頂は最澄の依頼がきっかけで行われたもので、筆頭に最澄の名前が見えます。

 

国宝 両界曼荼羅(高雄曼荼羅)のうち胎蔵界曼荼羅 紫綾金銀泥 平安時代(9世紀) 京都・神護寺
国宝 両界曼荼羅(高雄曼荼羅)のうち胎蔵界曼荼羅 紫綾金銀泥 平安時代(9世紀) 京都・神護寺

国宝 両界曼荼羅(高雄曼荼羅)のうち胎蔵界曼荼羅 紫綾金銀泥 平安時代(9世紀) 京都・神護寺

※修理後初公開! 日本最古、空海自身が制作に関わった現存唯一の両界曼荼羅。

現存最古にして、空海在世時に制作された現存唯一の両界曼荼羅です。高雄山神護寺に伝来したことから「高雄曼荼羅」の名で広く知られています。

『神護寺略記』か灌頂院条の記事より、淳和天皇の御願によって天長年間(824~834)に制作された赤紫綾地、金銀泥絵の両界曼荼羅で、空海が創建した神護寺根本真言堂(灌頂堂)に安置されていたことがわかります。その図様は、空海が入唐時に師の恵果から授けられた請来品そのもの、あるいは請来品をもとに弘仁十二年(821)に制作された第一転写本に依拠した可能性が高く、空海がはじめて日本にもたらした両界曼荼羅のもっとも正しい姿を伝える品といえます。

 

国宝 両界曼荼羅(西院曼荼羅〈伝真言院曼荼羅〉)金剛界 絹本著色 平安時代(9世紀) 京都・教王護国寺(東寺)
国宝 両界曼荼羅(西院曼荼羅〈伝真言院曼荼羅〉)金剛界 絹本著色 平安時代(9世紀) 京都・教王護国寺(東寺)
国宝 両界曼荼羅(西院曼荼羅〈伝真言院曼荼羅〉)胎蔵界 絹本著色 平安時代(9世紀) 京都・教王護国寺(東寺)
国宝 両界曼荼羅(西院曼荼羅〈伝真言院曼荼羅〉)胎蔵界 絹本著色 平安時代(9世紀) 京都・教王護国寺(東寺)

国宝 両界曼荼羅(西院曼荼羅〈伝真言院曼荼羅〉)二幅 絹本著色 平安時代(9世紀) 京都・教王護国寺(東寺)

両界曼荼羅は、金剛界と胎蔵界の一対で密教の世界観を示しています。二つが統合して密教が一本化(大日経系・金剛頂経系統)に思想体系化してまとめ完成させたのは空海の師・恵果で、空海が日本に伝えました。

本品は9世紀に遡り、彩色による両界曼荼羅としては現存最古の絵画となりますが、明度の高い鮮やかな色彩、ひときわ完成度の高い描写が目を惹く稀有な存在です。

後七日御修法に用いられたという伝承から真言院曼荼羅と呼びなわされましたが、実際は実際は東寺西院内陣に懸けられていた両界曼荼羅(『東宝記』)であるとの指摘がされており、旧軸に記されていた天和四年(1684)の修理銘からも本品が西院の什宝であったことが確かめられています。


第5章 金剛峯寺と弘法大師信仰

 

仏教界において、重要な役割を担うようになっていった空海。

その一方で自然の中で心静かに修行し、瞑想したいという望みを持ち続けていました。

やがて朝廷の許可を得て、理想の地において金剛峯寺の建立に着手します。

 

国宝 五大力菩薩像 絹本著色 平安時代(10~11世紀)和歌山・有志八幡講
国宝 五大力菩薩像 絹本著色 平安時代(10~11世紀)和歌山・有志八幡講

国宝 五大力菩薩像 絹本著色 平安時代(10~11世紀)和歌山・有志八幡講

仁王経を講讃して鎮護国家を祈る仁王会の本尊画像。豊臣秀吉が高野山に寄進する前は東寺に伝来したといいます。これほどまでの巨幅は国家を挙げて行われた法会にふさわしく、宮中大極殿の修法に用いられたとする説があります。

 

 

重要文化財 孔雀明王坐像 快慶作 一軀 木造 彩色 截金 鎌倉時代・正治二年(1200)頃 和歌山・金剛峯寺

正治二年に東寺長者の延杲が建立し、後鳥羽上皇の祈願所となった高野山孔雀堂の本尊です。像内両脚部にしるされた「巧匠(梵字アン)阿弥陀仏快慶」の朱漆書は後筆のものと考えられるが、なんらかの典拠に拠るものといわれています。

国宝 伝船中湧現観音像 絹本著 平安時代(12世紀) 和歌山・龍光院
国宝 伝船中湧現観音像 絹本著 平安時代(12世紀) 和歌山・龍光院

国宝 伝船中湧現観音像 絹本著 平安時代(12世紀) 和歌山・龍光院

空海が唐から帰る際、船に観音が現れて荒波を鎮めたといい、本図はその観音を描くと伝わります。しかし、特異な姿は実際には密教の秘法で行者を守護する別の尊格のもの。空海信仰が高まり、珍しい絵画が空海伝と結びつけられたようです。

 

重要文化財 弘法大師・丹生高野両明神像(問答講本尊像) 絹本著色 鎌倉時代(14世紀) 和歌山・金剛峯寺

高野山の地主神である丹生明神・高野明神は、空海によって

壇上伽藍へ勧請され護法神とされました。空海と護法神、高野山奥之院、両明神を祀る高野山麓の天野社を描く本図は、論議を行って神に法楽を捧げる問答講で用いられました。

 


弘法大師坐像(萬日大師) 木造 彩色 室町~安土桃山時代(16~17世紀) 和歌山・金剛峯寺
弘法大師坐像(萬日大師) 木造 彩色 室町~安土桃山時代(16~17世紀) 和歌山・金剛峯寺

弘法大師坐像(萬日大師) 木造 彩色 室町~安土桃山時代(16~17世紀) 和歌山・金剛峯寺

弘法大師空海の肖像です。顔を左に向ける姿勢が珍しいですが、近世の地誌では、この像をある者が一万日に渡り参拝したところ、夢の中で空海が「萬日の功真実なり」といって左を向き、再び像を配すると同じく左を向いていたとつたえます。

 


 

【開催概要】

 

■企画展名:生誕1250年記念特別展「空海 KŪKAI ― 密教のルーツとマンダラ世界」

■会  場:奈良国立博物館 東西新館

■会  期:2024年4月13⽇(土)~ 6月9⽇(⽇)[51日間]

■開館時間:09:30~17:00 ※入館は閉館30分前まで

     (名品展は開館時間が異なります。詳しくは奈良国立博物館公式ホームページをご覧ください。)

        https://www.narahaku.go.jp/

 ■休  館:毎週月曜日、5月7日(火)

     ※ただし、4月29日(月・祝)、5月6日(月・振休)は開館

 ■観覧料金: 一般 2,000(1,800)円、高大⽣ 1,500(1,300)円

        *( )内は前売および団体料金。

        *前売券は、2月13日~4月12日まで。

        *中学生以下は無料。 

■主  催:奈良国立博物館、NHK奈良放送局、NHKエンタープライズ近畿、読売新聞社

■学術協力:高野山大学

■協  賛:NISSHA、築野グループ

■協  力:インドネシア国立中央博物館、陝西省文物局、陝西省文物交流中心、西安碑林博物館、日本香堂、仏教美術協会

■展覧会公式HP: https://kukai1250.jp/